『利他の心』は人生の成功のキーワード

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平成27年(2015年)、立命館大学に「稲盛経営哲学研究センター」が開設された。
そのおり、稲盛和夫さん(名誉研究センター長)が、「なぜ経営に『利他の心』が必要なのか」と題して記念講演をされた。
私は、立命館大学が「経営哲学」をテーマに研究センターを立ち上げたことに敬意を表する。

稲盛哲学は、経営のみならず人生を成功(幸せ)に導く考え方であり生き方なのだと、立命館大学は考えたのだろう。

その記念講演の内容は、稲盛さんがどのご本にも書かれていることだ。
それを真理だと思うのか、何を言っているのかと思うのか、それは人の思いの差であり、感性の問題でもあるのかと思う。

ある現象を目にした時に、それを感動的に見るのか、何それ?と冷めた心で捉えるのか、それは良し悪しの問題ではない。
私が「心の友」とする人は、勿論前者であり、心温かく、絶えず人の心に思いを致し、人間の力の微力さを素直に認めて天を敬う人である。 まさに西郷南州が愛した『敬天愛人』の人である。

稲盛哲学を一言で言えば、それは『利他の心』であろう。それは決して、己を滅して公に奉ずる「滅私奉公」ではない。
私は、『利他の心』とは、己を活かして他を利する「活私利他」であり、それは世のため人のために尽くすレベルまでアウフヘーベンさせた「活私奉公」ではないかと思っている。

私は利己を極めることによって「利他の心」に近づくことができると思っているが、それは稲盛哲学の「利他の思想」に通じるものだと確信している。

1.「利他の心」は経営(=人生)に必要か

「利他」という言葉は昔は聞き慣れない言葉ではなかったか。利己に対しての利他である。稲盛さんの造語ではないだろうか。

殆どの人は「利他の心」は倫理や道徳上での言葉であり、経営とは無関係と考えているのではないだろうか。

私は考える。
倫理や道徳は人間として持つべき規範であり、経営はそうではないと考えるのか。
経営も人間の行為である。人間の行為であるならば、それは倫理的であり道徳的でなければならないのではないかと考えるのが当たり前ではないか。 稲盛さんは至極当たり前のことを、人間として生きている以上当然のことを仰っているのだ。

稲盛さんは仰る。
「私は経営者が『利他の心』を持つことと、企業の業績を伸ばすことは、決して矛盾するものではないと考えています。寧ろ、経営者が立派な会社経営をしたいと思うならば、『他に善かれかし』と思う『利他の心』を持ち、『心を高める』ことが不可欠であると考えて、会社経営を続けてまいりました」

2.京セラの経営理念に込められた思い

稲盛さんは部下から「これはどうしよう」「どうしたらいいだろうか」と判断を仰がれ、次々と経営判断を下さなければならなかった時、大変悩まれたそうだ。
悩みに悩んだ末に、考えられたことは、「子どもの頃、両親や先生から教わった『やってよいこと、悪いこと』を判断の基準にしよう」「判断基準を『人間として何が正しいのか』という一点に絞ろう」ということだった。

【京セラの経営理念】
「全従業員の物心両面の幸福を追求する」
「人類、社会の進歩発展に貢献する」

経営者の私利私欲を超えた、従業員のためという「利他の心」に基づいていたからこそ、多くの社員の共感を得て、社員の総力を結集することができたと思っている。

3.純粋な動機から第二電電を創業
国民のために長距離電話料金を安くしていくというような事業は、京セラのようにチャレンジ精神に溢れるベンチャー企業にこそ相応しいのではないか。

「動機善なりや、私心なかりしか」
国民のために、長距離電話料金を少しでも安くしよう。たった1回しかないこの人生を意義あるものにしようではないか。

人は、社会のため、国民のため、つまり、公のためという「利他の心」に基づく大義を掲げたときに、心から賛同し、惜しみなく協力することができる。

4.第二電電に成功をもたらしたもの
「国民のために何としても通信料金を安くしなければならない」という「利他の思い」に基づく大義が根底にあり、社員と共有され、お客様や代理店などの方々の共感を呼んだからだ。

純粋な「利他の思い」には、想像を超えたパワーが秘められている。

5.日本航空の再建に成功した要因
「世のため人のため」になるのであればという「利他の心」から、半ば義侠心にかられて、日本航空の再建にあたることを決意した。

日本航空の社員の意識が大きく変わり、「利他の心」に基づいて、それぞれの持ち場立場で、会社を良くしていこうと懸命に努力を重ねるようになったことが最大の回復要因だと思っている。

6.社員の意識を如何に改革したか
第一が、新生日本航空の企業としての目的を明確にしたこと。
日本航空の企業としての経営の目的は、「全社員の物心両面の幸福を追求すること」であるということを、「経営理念」として明確に定め、それを社員に徹底して伝えていったこと。

経営者が社員の幸福を考えずに、利益だけを追求しても、社員が心から協力してくれるはずはない。一方、経営者が、社員のことを何より大切に思い、全社員が安心して、やりがいと誇りを持って生き生きと働けるようにすれば、結果として、業績も向上するはずであると考えた。

社員が会社とともに物心両面の幸福を追求するために懸命になって働き、会社の業績があがれば、株主にも利益が還元されていくはずだ。

自らの経営哲学である「フィロソフィ」をベースとして、社内の意識改革を進めた。
「フィロソフィ」とは、「人間として何が正しいのか」を自らに問い、正しいことを正しいままに貫いていく中から導き出した実践哲学だ。
誰もが子どもの頃から教わってきた、正義、公正、公平、誠実、謙虚、努力、勇気、博愛などの言葉で言い表されるような、普遍的な倫理観に基づいて、全てのことを判断し、行動していこうとする考え方だ。

これは同時に、素晴らしい人生を送るための人生哲学でもある。「利他の心を判断基準にする」という心を高めることを通じて、幸せな人生を送る考え方が示されている。

企業の盛衰を決めるのは、目に見える財務力や技術力、また経営者による企業戦略以上に大切なものは、「目に見えない社員の意識」であり、その集合体である「組織風土」や「企業文化」だと考えている。

7.利己的な経営による成功には持続性がない
利己的な欲望だけで経営している者は、決してその成功を長続きさせることはできない。
利己的な欲望を原動力として、事業を成功させればさせるほど、経営者は謙虚さを失い、驕った態度で人に接するようになる。
経営者があまりに利益の追求に終始して、「人間として何が正しいのか」という基本的な倫理をなおざりにした結果、法律や倫理を逸脱したり、会社にとって不都合な事実を隠蔽したりして、社会から退場していくことがよくある。

8.「利他の心」は、なぜ成功をもたらすのか
「利他の心」とは、周囲や相手に善かれかしと思う心であり、「利他の経営」とは、自分のことだけを考えるのではなく、「自分が豊かになりたいと思うならば、周囲も豊かにするように考え、会社を経営する」ということだ。つまり、自分が利益を得たいと思うのであれば、同じように利益を得たいと思っている相手や周囲の人たちの心も忖度して、自分と同じように喜んでもらえるように経営していくべきだということだ。

世のため人のためという「利他の心」に基づく大義名分のある経営を行なえば、お客様や株主、取引先や代理店なども、会社に対して信頼と尊敬を寄せてくれるようになり、会社経営を成功へと導いてくれることになる。

自分と同時に相手のことを考えて行動することを「自利・利他」と表す。つまり、「自利・利他」とは、自分が利益を得たいと思って行なうことは、同時に他人の利益にもつながるべきだということだ。

江戸時代に京都で商人道を説いた石田梅岩は「まことの商人は先も立ち、我も立つことを思うなり」と言っている。
近江商人の「三方よし」とは、商売において「買い手よし」「売り手よし」「世間よし」が真の商人道であるとの意味である。

9.適者生存の法則
厳しい生存競争の世界を生きていくためには、一生懸命に努力することが絶対条件だ。常に変化していく環境に対して適応しようと必死に努力する者は生き残っていくが、努力を放棄する者は淘汰される。

人間の心の中では、常に「利己」と「利他」の心がせめぎあっている。我々は、日々反省をして、利己を抑制することにより、「利他の心」の割合を増やしていくべきだ。このようにして経営者が「心を高める」ならば、会社の経営は必ず伸びていく。

10.現代社会の矛盾を解決するキーワード
「利他の心」は会社経営だけでなく、コミュニティや社会、世界の融和にとって重要な概念である。「利他」の思想が、世界の普遍的な価値として認められ、実践されていくならば、世界は平和と繁栄に向かうだろう。

私の器量の目一杯のところで、私の得手を思う存分発揮することで、稲盛哲学ならぬ応援(=OUEN)哲学を貫くことで、夢を現実にしていきたいと思う。

不動院重陽博愛居士
(俗名 小林 博重)

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