小才は、縁に会って縁に気づかず
中才は、縁に気づいて縁を生かさず
大才は、袖振り合う縁をも生かす
これは、徳川将軍家の剣の指南役であった『柳生家の家訓』だ。
私は人と人をつなぐことを生業にしているが、この家訓は、私が何よりも心している箴言である。「小林博重の得意技」である。
ある業界の老舗大手企業にアプローチしたいと思った。その企業と長年取引がある、私が親しい企業のトップに紹介をお願いしたが、それはできる話ではないと断られた。
私は一度、その老舗企業の取締役を紹介いただいたことがあった。そして、その方は今は何人かの代表取締役のお一人に昇格されていると、会話の中でその話が出た。
「そうだ、これが『袖振り合う縁』だ」
そこで、会社代表電話に電話し、秘書に繋いでいただき、「代表にお会いしたい」とお願いした。
秘書もしっかりしている。「小林さまは代表と面識があるのでしょうか」と来た。さもありなん。当然のことだ。
「勿論、よく存じ上げております。これこれのご縁でお会いして、代表もよく私のことをご存知です」と話した。全く嘘ではない。嘘ではないが、ちょっと話を膨らませたところがある。 二日経って、代表から私の携帯に電話があった。「〇〇と申します。私にお会いしたいと秘書にお電話をいただきました。どう言うご用件でしょうか」 代表からお電話をいただいたことは、私のことを少しは覚えていらしたと言うことだろう。
私は10年来の知己であるかのように、電話した趣旨をアバウトお話し、以前いただいた名刺に書かれてあるメールアドレスにお電話した趣旨を詳細にご連絡したいとお話しした。 代表も、私のことを少しは思い出されたようで、話しぶりが急に親しげなトーンに変わってきた。
そして、私の目的は半ば達成されたのだ。
OUEN塾の学生リーダーは「団長の人脈づくりのコツは何ですか。どうしてそんなにいろいろな人と親しくなれるのですか」と聞かれたことがある。 その秘訣は、柳生家の家訓の応用なのだと話す。
一度お会いして、二度目にお会いする時には、10年来の知己のように親しげに話すことだと。
ある社長は、私のことを笑いながら「ど厚かましい人」と仰った。その通り、「ど厚かましいが憎めない」キャラが私の特技だと思っている。 そして、何よりも大切なことは、〇〇ファーストではない、相手ファーストの心があるかどうかなのだと思う。
それは会話の端々に自然と滲み出るものだ。
素直、正直であること。先に他を利することが、自分の利に繋がるという「自利利他の精神」があるかどうかと言うことだ。
要はそんなに難しいことではない。「Simple is Best」それを自然体ですることだ。
小林 博重