室生犀星は金沢が産んだ歌人だ。
私が卒業した金沢大学附属高校の校歌の歌詞は室生犀星が作詞したものだ。
金沢大学附属高校校歌
山をあふがぬ日もなきは
山の奥處(おくか)にきびしさの
極まりてゆくそらのいろ
母校をつつみ白妙(しろたえ)に
われらの若さをとどめゆく
市街(まち)の北なるあら海は
しらなみ立ててけぶるかな
窓によりそう友や我
學びて去らばふり顧れ(ふりかえれ)
學び来たらば不変の自然
野田のみちみち謙虚の
わかきわれらは歌ふかな
今、思い出しながら口ずさむと、昭和43年4月から46年3月の3年間、野田の山々に囲まれた金沢大附属高校で過ごした多情多感な青春時代を懐かしく思い出す。
犀星の歌詞にはふるさとへの思い、人との触れ合いの温かさが溢れている。
犀星の詩に「小景異情(その二)」がある。下記の詩は誰でも知っていることだろう。
ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
よしや
うらぶれて異土の乞食となるとても
帰るところにあるまじや
ふるさとに受け入れられず寂しくふるさとを去っていく犀星の想いを詩にしたものだそうだが、私のように、半世紀前にふるさと石川を離れて東京で暮している人間にとって、この詩は「東京から石川をふり顧る」想いでもある。
「ふるさとは遠きにありて思うもの」だ。ふるさとは懐かしく温かい。その想いが東京にいると募ってくる。
私が大学を卒業して、勤めていた安田信託銀行についても、ふるさと石川・金沢・能登を想うのと同様に「安田信託は遠きにありて思うもの」のような気がしている。安田信託も私の一つの「ふるさと」であるのだろう。
6月15日、みずほ信託銀行(旧安田信託銀行)を訪問し、後藤常務と栗原執行役員に、OUEN Japanの地域活性化事業に関するビジネスについてご相談した。
お二人には温かいご対応をいただき「私は安田信託を卒業したのだな」と懐かしい心持ちになった。
当に「ふるさとは遠きにありて思うもの」なのだ。
小林 博重