昭和31年東大応援部卒部の大先輩である中島清成さん(元朝日新聞社記者)は、東大応援部の精神を「3S-spirits」で表した。その3Sの Sは、①Service(奉仕)、②Sacrifice(犠牲)、③ Study(勉学)だ。
応援団はどうしても右寄りと思われがちだ。つっぱっているイメージも強い。それはあながち間違いではないが、中島さんの3Sスピリッツは至って自然体だ。 中島さんは応援部現役向けの講演で、「東大応援部の精神」を話されたが、それは右寄りの応援部のイメージとは180度違った。それは私の目指すところとなったのだ。
東大応援部は、横から目線。
①相手を思いやる心、相手に寄り添う心
②施すのではなく、尽くす心
③宮沢賢治の『雨ニモマケズ』の心。それは「行って◯◯する心」
④それは、時代を超えた永遠な心
⑤縦の規律のなかに、横の心を添える。その「横の心」が応援の心
⑥緩やかでありながら強固に結びつく。お互いが対等である関係
⑦肩組み合って夢を追い続ける。
⑧大らかで、牧歌的で、自由闊達なキャラクター
応援部現役時代、私は「応援」について考えた。応援の意味を考えた。アスリートを応援しても「応援のおかげで勝った」とは皆思わないだろう。しかし、応援がないとプレイヤーは力が出せないのかもしれない。例えば、相手チームが盛んに応援して、こちらが全く応援しないことを考えたら、そうだと思う。たったそんなことだけのために応援するのか。 いや、応援は黒子だ。黒子に徹することが応援の本質だ。
東大野球部の同期たちは、私に『いつも弱い野球部を同じトーンで応援してくれることに感謝する。応援部の声援が力になっている。「頑張れ、頑張れ、◯◯」「かっ飛ばせ、かっ飛ばせ、◯◯」「勝つぞ、勝つぞ、東大」はいつも聞こえている。元気が出る。ありがとう』と言ってくれる。それだけでも応援する価値はある。
そんなことを考えて、私は「応援は哲学だ。生きる哲学だ。人間の哲学だ」と思うようになった。
それが、私の生きる原点になったのだ。
小林 博重