OUEN塾は4日間のイベントだが、2日目と3日目はグループに分かれて企業訪問(1日2〜3社)し、約3時間をかけて企業の経営幹部や先輩社員の方々とのディスカッションをはじめとした交流を行う。4日目は学生の発表会だが、他のグループの学生に向けて訪問企業を紹介したり、企業の方にも入っていただいて同一テーマでディスカッションをする。そのために、第1日目のオリエンテーションは「どのような視点で企業を見るのか」をテーマに講演の時間を持つ。
参加学生は大学1〜2年生だから就職はまだ先だ。学生はともすれば大企業や有名企業に目が行きがちだ。「生きるとは」「働くとは」という人間が生きていくについて本質志向をして企業を見ることをしていない人がほとんどではないかと思う。それではいけない。OUEN塾で、本質志向のさわりでも感じてほしい。それがOUEN塾の目的だ。
アメリカ企業は株主を意識して短期的な利益を追う傾向があるとされてきたが、それが変わってきたようだ。
講師をお願いしている小野塚惠美さんは「これから伸びる企業は、環境と社会と企業統治を念頭において経営する企業であり、近い将来に就職を考えるときにはそのような企業を選ぶべきだ」と説かれる。小野塚さんは外資系投資会社で、いわゆる「ESG投資」をしている当事者であり、これから投資する企業は「ESG経営」をしている企業だ、ということだ。この経営は世界的トレンドとなりつつあるようだ。
日本はどうしてもアメリカかぶれのところがあり、アメリカがいいとなれば日本も右へ倣えだということだが、おっとどっこい、日本にも明治の初め、同様な思想を説いた人がいた。今度の一万円札の肖像画に決定している渋沢栄一がその人だ。
渋沢栄一は「近代日本資本主義の父」であり、名著『論語と算盤』の著者である。
渋沢は孔子が論語で説いた道徳とビジネス(算盤)を一致させることが日本の資本主義が成長していくためには緊要であると説いたのだ。
渋沢は持続的な成長に何が必要かといえば、それは個別の利益を追うのではなく、「多数社会を益して行くのでなければならぬ」と説いた。「よく集むるを知りて、よく散ずることを知らねば、その極、守銭奴となる」と言っている。すなわち、「如何に散ずるか」が必要であり、そのような人間が近代社会を作っていくのだと言っている。
OUEN J apan は、散ずるところからスタートした。しかし、それでは私の想いは果たすことができない。論語だけでは夢は果たせないのだ。「論語と算盤」の両輪がバランスしてこそ想いを果たすことができる。
早急に算盤の中身を練ってOUEN Japanに加えたいと思う。
小林 博重