順境良し、逆境なお良し

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六十有余年の人生を振り返ってみると、総じて「私の人生は運がいい」と思います。
人間は毎日が大なり小なりの決断の連続です。大きな決断と言えば、就職や結婚や転職等があります。今になって振り返って考えてみれば、その時は全身全霊で決断したことと思いますが、それは「青春の想い」がそうさせたことであり、人生を哲学的に考えた深遠な考えはありませんでした。 この歳になると、人生は幸と不幸、順境と逆境が交互に廻ってきて、当に、人生は”禍福は糾える縄の如し”だと実感を持って納得するのです。
還暦を過ぎ白秋を迎えた年代になって思うことは、
「私は運がいい。人生の決断は、思い通り順境を招いたこともあり、逆に意に反して逆境という下り坂を転げたこともあった。いずれにしてもその決断をしたことで今の自分がある。
子どもに恵まれ、友人に恵まれ、思いの儘に生きてきた。これも今迄出逢った人たち皆さんのおかげであり、私が裏表なく人生を生きてきた結果だと思う。今迄の失敗を素直に反省し、それを糧にして、これからの人生後半戦を明るく前向きに生きていけば、必ずや幸せな人生を全うできるはずだ」
森信三翁は述べています。
人間は何らかの意味で逆境の試練に遭うのでなければ、自己中心的に物事を考える態度からの脱却は困難であって、これ古来「人は苦労しなければ人間にはなれぬ」といわれるゆえんである。
即ち「苦労」という人生の試練によって、われわれ人間は自分本位の我がままな考え方なり願望なりが叩きつぶされるのである。同時にそれによってわれわれは、自分の考えが自分勝手だったと気づけば、そうした失敗と痛苦を代償として、自己の我見が それだけ弱められるわけである。
「幸福は最初は不幸の形でやってくる」といわれるのは、われわれ人間は、自分に降りかかる不幸を耐え忍ぶことによって、我見がとれるので、次に出逢う事柄に対しては、正しくこれに対処することができ、随ってそこには幸福が招来せられるというわけであろう。
小林 博重