青春

今朝は5時前に起床し事務所に出勤して草花の水遣りと部屋の掃除のあと、久しぶり
に『日本寮歌集』(歌:加藤登紀子)に聴き入りました。明治大正昭和の旧制高等学
校は全寮制でした。学生は3年間の寮生活のなかで、青春の心意気と悩み・歓びの多
感な心を寮歌に歌い上げたのです。
私は東大教養学部の2年間、駒場寮に住んでおりましたが、旧制第一高等学校の名残
がありました。1部屋4人が住むというプライバシー皆無の寮でしたが、壁面に書かれ
ていた落書きにも似た青春讃歌に、往時の寮生の青春の息吹に触れた気がしたもので
す。
旧制高校は35校あり、寮歌は二千余曲あるとか。第一高等学校(現東大教養学部)は
高唱調な歌が多く、若い心の琴線に触れる抒情的な逍遥歌は第三高等学校(現京大教
養学部)と、高校によって寮生の気質は違っていたようです。いずれの曲、歌詞とも
感性溢れる胸を打つものが多いのには驚かされます。いつの時代も青年は燃えて生き
ているのです。私など還暦を過ぎた人間には、青春を思い起こすには「寮歌」を聴き
歌うことに限ります。
青春  原作:サミュエル・ウルマン
青春とは人生の或る期間を言うのではなく、心の様相を言うのだ。
優れた創造力、逞しき意志、炎ゆる情熱、怯懦(きょうだ)を却ける勇猛心、安易を
振り捨てる冒険心、こういう様相を青春と言うのだ。
歳を重ねただけでは人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる。
歳月は皮膚のしわを増やすが、情熱を失うときに精神はしぼむ。
苦悶や、狐疑や、不安、恐怖、失望、こういうものこそ恰(あたか)も長年月の如く
人を老いさせ、生気ある魂をも芥に帰せしめてしまう。
歳は七十であろうと、十六であろうと、その胸中に抱き得るものは何か。
曰く、驚異への愛慕心、空に閃く星辰、その輝きにも似たる事物や思想に対する欽
仰、事に処する剛毅な挑戦、小児の如く求めては止まぬ探究心、人生への歓喜と興
味。
人は信念とともに若く、疑惑とともに老ゆる。
人は自信とともに若く、恐怖とともに老ゆる。
希望ある限り若く、失望とともに老い朽ちぬ。
大地より、神より、人より、美と喜悦、勇気と壮大偉力の霊感を受ける限り、人の若
さは失われない。
これらの霊感が絶え、悲嘆の白雪が人の心の奥までも蔽いつくし、皮肉の厚氷がこれ
を固く閉ざすに至れば、この時こそ人は全くに老いて神の憐れみを乞うる他はなくな
る。
小林博重