昔日から昨今までの私が関わる事業の経緯と顛末を顧み、名だたる哲人経営者の箴言を加味して、『事業の成功と永続の肝』は何かと考え、確信にまで至ったことは、「事業の成功・永続は、経営哲学(本質)と実績・実利(手段・ノウハウ)とのバランス」であるということです。
経営哲学の肝は、「利他主義」であり「恕の心」です。相手が何を欲しているのか、それに自分は何か応えられることはないかと考えることであり、自分がしてほしくないことは決して相手にしないことです。この肝を信条にしていないと一時の成功(と思えること)があってもそれは永続的に続かないものです。人さまが永続的に応援してくださいません。
しかし、如何に優れた経営哲学であっても、それは決して表層的なものであってはすぐ化けの皮が剥がれてしまいます。人がまず反応するのはその人の経営哲学ではなく自分の実利だと思います。これは人間として当然なことです。利己主義は利他主義の入口なのです。人は「利己主義でなければ、高い志の利他主義を貫く哲人経営者にはなることはできない」のです。
まずありきことは、相手が何を求めているのか、何をしてほしくないのか、を良く把握して、それに応えるパフォーマンスをすることです。
それがあって初めて、相手が「この人のお蔭で良いことがあった。この人と長く付き合うといいことが長く続くかもしれない。そもそも、この人がしてくれるベースに何があるのだろうか」と思い始め、それで、その人が堅持している「経営哲学」に思いが至るのです。
そして、そのような経験をした人たちは、その人の「パートナー」「協力者」「ファン」になってくれるのだと思います。
事業の成功と永続の肝は案外そんなところにあるのではないでしょうか。あくまでも自然体でざっくばらんが一番です。そして、多くの人を巻き込んで成功の味を分け合う度量を持つことですね。
小林 博重