早朝の明治神宮外苑は人も自動車も疎らで、思いのまま散策を楽しむことができました。新国立競技場の工事は進んでいるようで、柵の間から大きな囲いが見えています。神宮球場、絵画館、明治記念館を後にして、赤坂御所、迎賓館を1周します。赤坂見附を過ぎると豊川稲荷、銀杏並木と続き、外苑前の事務所に到着します。ゆっくり歩いて約1時間半。気温は13 度。いい運動になりました。
森信三先生の『若き友への人生論』(致知出版社)を読みました。森先生の至上の箴言“人生二度なし”
宇宙のなかの一つの極微天体ともいうべきこの地球に、無窮の「時」を経過して、ついにわれわれ人類の出現を見るに至ったことは、宇宙最大の奇跡ともいえる出来事ですが、私がこの世に、昭和の御代に生を享けたこともまた「奇跡」の一つなのです。その奇跡によって生を享けたならば、天の思し召しに副うべく生きていこうと思います。決して我が人生を無為に過ごすことはできないのです。当に“人生二度なし!!”
今から20年前。44歳のおり、21年間勤めた安田信託銀行を退職しました。そしてほぼ同じ時間を一本独鈷で生きてきました。大学を23歳で卒業して現在まで41年間。前半は「寄らば大樹」の思いで大樹のトップを目指しましたが、後半はコペルニクス的転回で七転八倒、紆余曲折の20年間でした。全く望んでそうなったわけではありません。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言われますが。賢者でない私は先を見通す知恵は持ち合わせておらず、自らが招いた逆境で、経験を積み重ねて今日の自分があります。
森先生が仰ることには、
この世は苦悩の故郷
幸福は最初は不幸の形をして現れる
神はよりよいものを与えるために取り上げる
不幸をしのぶことで我見が払われる
即ち「苦労」という人生の試練によって、我々人間は自分本位の我儘な考え方なり願望なりが叩き潰されるのです。同時にそれによって我々は、自分の考えが自分勝手だったと気づけば、そうした失敗と痛苦を代償として、自己の我見が弱められるのです。
この20年間を振り返って、安田信託銀行を辞めないでいたとしたら、今とどちらが幸せだったかと思うとき、私は「今が絶対的に幸せだ」と自信を持って言えます。人生は二度ないのですから、もう一度44歳に戻って銀行に勤め続けることなどできはしません。しかし、幸せとは自分の心が決めるものです。人それぞれ、自分の人生です。自分に正直に生きること。当たり前のことを一所懸命し続けることです。ただひとつ、妻には苦労を掛けたと思います。生涯に亙り我が使命を全うすることにより償っていきたいと思うものです。
小林 博重